WATCHMAN 経皮的左心耳閉鎖術

経皮的左心耳閉鎖術


1)心房細動と脳梗塞の関係は

 脳梗塞は、脳の血管が詰まることで脳に障害を受ける病気です。発症すると、寝たきりや認知症になり、場合によっては死に至ることもあります。脳梗塞の3大原因として、細い血管が詰まる「ラクナ梗塞」、血管が狭くなりその部分に血栓ができる「アテローム血栓性脳梗塞」、心臓の中にできた血栓が脳に流れていくことで血管が詰まる「心原性脳梗塞」があります。
 心房細動は、心臓の上半分の部屋(心房)が小刻みに不規則に震える不整脈です。加齢とともに増加し、80歳以上の男性で4%、女性では2~3%に心房細動があるといわれています。2020年の統計では、わが国の患者数は約100万人、富山県内では約1万人と推定されています。自覚症状は動悸や脈の乱れ、胸苦しさなど多岐にわたり、初期は症状が強くても慢性期には症状を感じにくくなります。
 心房細動が生じると、心房の中で血液がよどみ、血栓ができやすくなります。特に左心耳という部位で血栓が形成されやすく、この血栓が左心耳から剥がれて脳の血管に詰まってしまうことで脳梗塞を発症します。心原性脳梗塞は脳の広範囲に障害が及ぶため、心房細動を発症した患者さんでは脳梗塞の予防が必要になります。


2)心房細動が原因となる脳梗塞を予防するには

心房細動による自覚症状の有無にかかわらず、脳梗塞の予防が必要です。主な脳梗塞の予防法は、血をさらさらにして血栓を作りにくくする「抗凝固薬」の内服でした。現在多くの患者さんがこの治療を受けておられ、有効性が確立された治療です。
しかし抗凝固薬を内服すると、胃や大腸など消化管からの出血や、脳内出血を引き起こす場合があります。また高齢者の場合、転倒時の怪我による出血も問題です。このような出血リスクが高く、長期にわたって抗凝固療法を行えない患者さんを対象とした新しい脳梗塞予防治療が、「経皮的左心耳閉鎖術」です。


3)経皮的左心耳閉鎖術とは

 心房細動で脳梗塞を発症する血栓の90%以上は、左心房の一部である「左心耳」と呼ばれる部分で形成されます。この手術では、カテーテルを脚の付け根の静脈から心臓の中まで進め、左心耳閉鎖デバイス(WATCHMAN:ウォッチマン)を左心耳の入り口に留置することで血栓のできる左心耳を閉鎖します。全身麻酔で治療を行いますが、脚の付け根の5mmほどの傷で済むため、体への負担が小さく、治療翌日から普段通りの生活ができ、治療2日後には退院できます。留置した左心耳閉鎖デバイスが心臓内の組織で覆われるまでしばらくは抗凝固療法が必要ですが、治療の約45日後に行うエコー検査で問題がなければ抗凝固薬を中止できます。これまでのところ、ほとんどの患者さんで抗凝固療法を中止できています。
 わが国では2019年に始まった新しい治療で、実施できる病院は全国でも約100施設と限られています(2021年5月現在)。北陸3県では2021年5月現在、当センターでのみ実施しています。また、北陸で唯一の「プロクター(手術指導者)」が在籍しています。プロクターとはWATCHMANの適応の判断や技術指導を行うことができるスペシャリストのことで、当センターでは上野医師がプロクターに認定されています。
 この経皮的左心耳閉鎖術は、心房細動による脳梗塞発症リスクが高い一方で出血リスクが高く長期に渡って抗凝固療法が行いづらい患者さんが対象となります。出血リスクが高くても左心耳の大きさや形状が本デバイスに適していない場合や心房中隔欠損症術後の場合など、この治療が受けられない場合もあります。心房細動に対する抗凝固薬でお悩みでしたら、ぜひお気軽に当院にお問い合わせください。



【動画】心房細動による脳卒中のリスクと左心耳閉鎖術

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